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【本】重力とは何か

重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る (幻冬舎新書)

重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る (幻冬舎新書)

  • 作者:大栗 博司
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2012/09/12
  • メディア: Kindle版

Kindleのアンリミテッドで読んだ。久々に夢中になって読めた本だ。私は理系方面については中学レベルの知力しかないので、難しいことは全然分からないし、数式を見てもチンプンカンプンだ。それでも最近出ているこの手の本は、そういった理系弱者でもちゃんと理解できるように書かれている。ものすごく頭のいい人が執筆しているので文章が明快で論理的に筋が通っているので読書の快感が味わえる。

それにしても宇宙は果てしない。そしてその100乗ぐらい果てしなく、ミクロの世界も同様に、想像を絶するぐらい小さい。極端に大きかったり小さかったりすると、人が普段の日常で考えている「当たり前」がぜんぜん通用しなくなる。にもかかわらず理詰めで思索と研究を続けて、世界の始まりから宇宙の果てまで定説を作ってしまう。

「ビッグバン理論」なんて仮説に過ぎないとおもっていた。しかし読み進めていくと「ビッグバン理論が成り立たないと、他の公理も成り立たない」という隘路にはまり込んでしまう。なんせ相対性理論や量子力学は真理の地位を得たのだ。間違っていたら原爆は爆発しないし、GPSは場所を示してくれない。

物理学は他の自然科学とは異なり「観察ありき」ではない。最初に演繹法で確かめる術より先に結論を出してしまう。最初は机上で計算され、近年はスーパーコンピュータで計算する。そして結論を裏付ける研究が行われて、めでたく定理・公理となる。最近のノーベル賞受賞者の物理部門はその裏付けとなる研究・実験方法の確立で成果を出した人が多い。小柴昌俊教授のスーパーカミオカンデもまさにそれだ。

死ぬほど頭のよい人がいるのに

なんで世界は不条理が溢れているのだろう、稚拙な政治がまかり通っていいるのだろうか。世界の始まりと終わりの計算式を作れるのに、なぜ現世の政治や経済は混乱しているのだろうか。物理学者が特異的に高知能で、人文系学者はそうではないだけなのだろうか。

SFの世界ではこういう諦念をもとに、相対性理論・量子力学・遺伝子工学・コンピュータサイエンスを統合した、全知全能の神ともいえるコンピュータが世界を支配する世界が頻繁に描かれる。そういえばエヴァンゲリオンでも「マギ」というシステムが世界を司っていた。

フィクションではなく民主主義の限界を近いうちに世界が晒して、弁証法的帰結として、高度に発達した人工知能に政治判断を任せる世界が来る可能性は高い。おそらく100年後ぐらいにはそうなっているのではないか。俺たちはその前に寿命が尽きるから関係ないけれど。

こういう本を読んでいると、心底日々の悩みがどうでもいいことに感じる。しかし、どうでもいいちっぽけなことなのだからこそ、なんとかできて当然だという希望も出てくる。とりあえず目の前のゴミをゴミ箱に入れよう。

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