天空団地_404

You play with the cards you’re dealt… Whatever that means.

二項対立と二者択一

ダメな思考の典型例の一つに
「二項対立と二者択一の違いを理解しない」がある。

二項対立は対立概念の間にあるグレーゾーンついても考慮した上で、思考の枠組みとして両端を対立軸として使用する。思考というのは概念化であり、ある程度単純化しないと論理を組み立てることが困難になる。

二者択一は似て非なる思考だ。グレーを認めず世界を白と黒のツートンで考えてしまう。愚者思考のピットホールともいわれる。この思考法の弊害は極めて大きい。ネット論壇が刺々しくなるのも二者択一を前提として語ってしまうからだ。

「勝ち組」「負け組」という対立軸前提の議論がある。実際は「勝ち組とも負け組ともいえない」「どちらといえば負け組だが恵まれている部分もある」「勝ち組と世間はいうが多くの犠牲を払っている」このように世界はアナログだ。そんなの当たり前だといわれそうだが、いざ言葉を使って思考すると、アナログ的な「間」がすっ飛んでしまい極端な結論を導いてしまいがちになる。

個人の銀行口座の残額が0円の人と1億円の人がいるとする。しかし0円の人は親が資産家で食うにも寝る場所にも困らず働かなくてよい人かもしれない。残高が1億円あっても債務が2億ある金持ちというのは実は多い(孫正義さんとか)数字で示せる銀行残高さえ単純化すると真実が見えなくなってしまう。

人間理性はその特性として負の要素の方を正の要素よりも高く見積もる。悪い要素をある程度過大に認識しないとリスクヘッジできないからだ。俗にいうと「人は持っているものに感謝するより、持っていないものへの不満の方が遙かに大きい」という心理学的真理がある。負の要素を過大視する人間が二者択一思考に陥ると「差別・怒り」といったネガティブな感情の奴隷になって、常に憤怒に駆られ攻撃的になってしまう。ネトウヨさんとか極左さんとか周りにもいる。日常生活においても客観的にみて、そこまで不遇とは思えないのに、いつも不満タラタラの輩も掃いて捨てるほどいる。大抵嫌われているけれど・・・

論理的に思考するために対立軸を設定するのは正しい。しかし日々の営みの中で隙さえあれば二者択一思考をしてしまう視野狭窄は、当人にも周囲の他者にも害悪しか生じない。二者択一思考の度合いは人格障害の診断基準の一つにもなっている*1 

*1:DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引