天空団地_404

You play with the cards you’re dealt… Whatever that means.

自己啓発の系譜

自己啓発の骨格にはアメリカ発のプラグマティズム(経験不可能な事柄の真理を考えるより経験・実用を踏まえた行動を重視する考え方)が根本にある。形而上学的な観念論に対するアンチテーゼとして発生した。アメリカのフロンティアスピリットや科学至上主義と相性が良かったことから新しい倫理として必然的に生まれた。

プラグマティズムと相性がいいのがアドラー心理学と東洋思想だ。アメリカ発の自己啓発本はこの三つの源流に最新の「行動心理学」を組み合わせたものが9割位を占める。昨今フロイトやユング心理学の評判が悪いのは基本的に観念論で構築されているからだ。

ニーチェがキリスト倫理を徹底批判した結果、その結論が東洋思想に近づいた事実は割と有名だ。フロイト批判も「源流がキリスト教の原罪思想にあるのでは」という批判が常につきまとう。原罪に対する贖いを神に頼るしかないと説くキリスト教と、因果論的に過去に遡ることで心の闇を理解できるというフロイト心理学の理路は通底している。

観念主義≒キリスト教≒ルサンチマン衆愚思想は現在の反知性主義のバックボーンである。トランプ大統領を強く支持したのは保守的なキリスト教信者でラストベルトで経済的苦境に喘ぐワーキングクラスだった。

信仰を持たない反知性主義者というのが、更に厄介で手に負えない。彼らはポピュリストに騙されやすい。寄って立つものがないから自分の感情的な正当性を立脚しようと不毛な苛立ちを攻撃性に変換させて、それを燃やすことで自己に折り合いをつけている。