天空団地_404

You play with the cards you’re dealt… Whatever that means.

起因と原因を混同してはいけない

相関関係しかないのに因果関係があると思い込む人たちがいる。彼らがまき散らす間違ったテキストがネット上に瀰漫して収拾がつかなくなっている。誰もが適当に発信できるようになった代償として、陰謀論者の母数が増えてしまった。

類似の話になるのだが、起因と原因は分けて考えるべきというお話。

ワクチン陰謀屁理屈の根拠に「ワクチンを打ったら、こんなことになった」とおどろおどろしい画像を連投して、恐怖を煽っているTwitterアカウントがあったりする。

代表的なものに「ワクチンを打ったら免疫系が破壊されて帯状疱疹になった」というのがある。帯状疱疹は私も罹患したことがあるが、相応に辛い病気である。ただ治療法が確立されており、私も一度の通院で処方された薬を一定期間服用したらきれいさっぱり治った。

帯状疱疹は実は水ぼうそうと同じウイルスが再発したもので、水ぼうそうは大半の人が幼少期に罹患して結果耐性ができる。しかし、加齢して体力が衰えてくると別の作用機序でまた悪さを発露する。大人の二度目の水ぼうそうと考えて間違っていない*1

なのでワクチンの副反応で体が大変な隙を狙って発病する。大人の三人に一人は罹患するわけで、ワクチンの接種の有無に関係なく発症する人は発症する。普通に考えればワクチン接種は原因ではなく起因だ。

世の中には起因と原因の区別がつかない人が一定数いる。例えば「パワハラが原因でうつ病になった」というのがある。一見正しく思える。しかし、パワハラは起因であり原因ではない。パワハラを被った人が全てうつ病になるなら原因だが、パワハラでストレスを溜めて胃潰瘍になってしまっても、うつ病には罹患しないことは普通にありうる。

病むことのトリガー(起因)と病みそのものの理由は別である。原因であるなら人によって体質によってアウトプットが異なるのはおかしい。暴力で外傷を受けたら、外傷の原因は暴力だ。しかし、暴力を受けた人間が必ず精神疾患になるとは限らない。この違いがわからないのは、単なる知性の欠如か、もしくは起因を原因だと決めつけた方が都合が良いゆえの意図的な錯誤だ。

臨床医学ではこの辺りについては実に厳密で、素人の憶測なんぞ吹き飛ぶほど精緻なルールで誤認が生じないようになっている。こういうのって、わからない人には説明しても仕方がない。その”わからなさ”が本質的な原因なのだから