- 作者:高野 秀行
- 発売日: 2020/05/28
- メディア: 文庫
納豆菌を使用した大豆加工食品である納豆は、日本固有の食材ではなく、主として東アジアの辺境民族の必須食品として長らく食されてきた。タンパク質と旨味を得るための万能食材としてミャンマーやタイの北部民族、ブータン・ネパールの少数民族、中国南部の一部の民族に愛されている。乳製品の文化圏ではなく、魚・川魚さえ得にくい地域において、必然的に好まれるようになるらしい。
納豆は日本以外にもあるのか、という素朴な疑問から、幾度となく現地に足を運び地元民と深く交流をしながら情報を集めて考察し、場合によってはその道の大家にまで話を聞く。フィールドワークの知見と、学問的な知見を絡めて見事な仮説を組み立てる高野氏は、ノンフィクションライターの枠に収まりきれない、一流の学者としての顔もある。
国外探求と並行して、日本国内の納豆の歴史にも深く切り込んでいく多重構造も素晴らしく読んでいて飽きない。