天空団地_404

You play with the cards you’re dealt… Whatever that means.

謎のアジア納豆

3年に一度ぐらいのサイクルで高野秀行の作品に嵌まっている気がする。エンタテイメントとして一流だし、学術探究書としても優れている。文章の巧みさを楽しみ、深い洞察力に感嘆する。1冊で二度美味しいのが高野秀行ノンフィクションの醍醐味だ。

納豆菌を使用した大豆加工食品である納豆は、日本固有の食材ではなく、主として東アジアの辺境民族の必須食品として長らく食されてきた。タンパク質と旨味を得るための万能食材としてミャンマーやタイの北部民族、ブータン・ネパールの少数民族、中国南部の一部の民族に愛されている。乳製品の文化圏ではなく、魚・川魚さえ得にくい地域において、必然的に好まれるようになるらしい。

納豆は日本以外にもあるのか、という素朴な疑問から、幾度となく現地に足を運び地元民と深く交流をしながら情報を集めて考察し、場合によってはその道の大家にまで話を聞く。フィールドワークの知見と、学問的な知見を絡めて見事な仮説を組み立てる高野氏は、ノンフィクションライターの枠に収まりきれない、一流の学者としての顔もある。

国外探求と並行して、日本国内の納豆の歴史にも深く切り込んでいく多重構造も素晴らしく読んでいて飽きない。