天空団地_404

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SS型遺伝子

もっと言ってはいけない (新潮新書)

もっと言ってはいけない (新潮新書)

橘玲氏の著作は前世紀から愛読している。最近はベストセラー作家の常連になった。この本は馬鹿売れした本の第二弾だ。主に進化心理学と遺伝子工学の知見から現代社会を読み解こうという野心作。最新の知見で新たな視野を与えてくれる一冊だ。

人間の性格に強い影響を与える遺伝子のパターンがあるらしい。主として脳内のセロトニンの制御に関わる遺伝子だ。ストレス耐性の強いLL型、弱いSS型、中間のSL型に分けられる。アフリカ系はLL型、ユーラシア大陸西側ではLL型とSL型が圧倒的に多い。

ストレス耐性に弱いSS型は東アジア、特に(日本・中国・韓国)に極端に多い。そして特に日本は突出して多い。SS型の多さは自殺率の高さや、うつ病の罹患率に顕著だ。

生きていくのが辛くなるSS型がなぜ淘汰されなかったのか? という疑問がある。この本の推察は「この地域は定住型で人口密度の大きい稲作地域で、共同体における他者の顔色を伺うコミュニケーション能力が弱いと生き残れなかったからだ」というのが仮説だ。中国や北朝鮮のように一党独裁国家だったり、国民情緒に政治が振り回される韓国、忖度政治が跋扈する日本の政治風土も、根っこをただせば遺伝子の型にあるという主張だ。

前著がベストセラーになったのはエビデンスを提示して「人生は遺伝子で大枠が決まり、性格は親の教育よりも思春期を迎えるまでの交友関係に大きく支配される」と喝破したことだ。生まれもった資質と、真っ白なノートに最初に書き込まれた他者との交友関係が人生のほとんどを決めてしまう。そういう身も蓋もない結論だ。

優生思想的だと批判されるのではと著者も出版社も恐れていたらしい。しかし、意外なことに「己の不甲斐なさを主因として不幸になった」と思い込んでいた人たちにとっては、運命決定論的な主張にかえって安らぎを見いだしたらしい。

抱えている不幸を「自己責任」に必要以上に帰さなくてもよいというのは、救いだろう。僕のメランコリックな性格や地頭の悪さも、己が日本人の平均値に近い平凡な人間にすぎないのだから仕方がない、そう考えると肩の荷が下りる気がする。。

言ってはいけない 残酷すぎる真実 (新潮新書)

言ってはいけない 残酷すぎる真実 (新潮新書)