当事者のいうことは信憑性が乏しい

一般に自伝は一次資料にはならない。日記やリアルタイムで使った手帳は一次資料になるが、回顧禄というのは客観的事実と乖離している場合が非常に多いのだ。

個人的にビートルズ関連の資料をよく読んだ。ジョージ・ハリスンは自伝を書いているし、ポール・マッカートニーも語りおろしを中心に記された分厚い本がある。

ジョージ・ハリスン自伝―I・ME・MINE

ジョージ・ハリスン自伝―I・ME・MINE

ポール・マッカートニー―メニー・イヤーズ・フロム・ナウ

ポール・マッカートニー―メニー・イヤーズ・フロム・ナウ

発売当時は大いに話題になったが、ジョージの本は生前のジョンに「どうでもよいことばかり書いている」と痛烈に批判されたし、ポールの本も、ジョン・レノンが言ったこととの差異ばかりが話題になり、この本を底本にポール・マッカートニーの歴史が語られることはほぼない。マイルズデイヴィスの自伝も評判がよくない。

記憶というのは常に上書き処理が行われており、当人が120%間違いない事実として認識していることが、客観的事実と酷く異なることは普通にある。人の記憶の不完全性についての研究書は山ほど書かれている。特によい思い出(過去の栄光)と悪い思い出(トラウマ)はより強度の強い記憶に書き換えられる。

我々は過度に過去について語る人間を信用しない。過去についての自分語りが好きな人は嫌われる。沈黙は金・雄弁は銀といわれるが、過去に関しては沈黙は金・雄弁はゴミである。

記憶がウソをつく!

記憶がウソをつく!