結婚しました。相手は声優の浅野真澄さんです。詳細は先程、彼女がラジオ『週刊マネーランド』で語った通りです。
— 畑健二郎 (@hatakenjiro) 2018年2月12日
僕の方は今週の水曜日から少年サンデーで新連載『トニカクカワイイ』が始まります。彼女に応援されながら、二人でしっかりと歩んでいきますので、今後ともよろしくお願いします。
「ハヤテのごとく!」という執事ギャグのラブコメディ漫画で一発あてた少年サンデーの看板漫画家のお一人です。師匠の久米田康治の予言通りに声優と結ばれました。めでたいことです。お相手の浅野真澄さんは技巧派声優として著名で、声優以外のフィールドでも多彩な才能で輝く素敵な人です。
10年前「ハヤテのごとく!」に嵌まっていた。
- 作者: 畑健二郎
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2005/02/18
- メディア: コミック
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[ハヤテのごとく!] - 架空の杜
ご成婚&新作がサンデーで新連載とのことで、私にとっての畑健二郎先生について少々語ります。
50巻に達した長期連載で長らく少年サンデーの看板作の一つでした。しかし、途中から悲惨なほど作品のクオリティが下がりまくって、ファンだった自分を恥じるぐらいの酷い内容になり果てました。それだけ一時期はこの作品に惚れ込んで過剰な期待をしていたわけです。
10巻までは言葉に還元できない魅力があった。
この作品の極みは第98話でしょう。これを読んで1巻から買い続けて本当に良かったと無意味に感激したものです。
d.hatena.ne.jp
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ただ神懸かっていたのはここまでで、100話を境にアシスタントに作画を任す比率が増え、この作品の本質的な良さがジワジワと漸減していきます。それでも200話ぐらいまでは娯楽作品として非常に優れていました。
キャラの戯れに徹していたからこそ魅力があった。
10巻までは、ひたすら魅力的な登場人物を絡ませることだけに創作力を全注入し、物語は世界観のバックボーンとして背景に徹していました。流れるように物語を綴るのではなく、キャラの戯れの重なりのみで作品世界を構築していました。そこで生まれたのが「桂ヒナギク」という傑作キャラでした。
スキャン画像の残滓(^_^;
架空の杜 ヒナギク - Google 検索
ヒナギクを筆頭によくできたキャラが、緩い世界でひたすら馴れ合うという作風にポストモダン的な新しさをつよく感じました。とにもかくにも漫画家として成功するために、すべてのキャラクターに心血を注いでいました。そこがとにかく新しかった。
ストーリーに軸足を移して馬脚を現しまくる(-_-;
10巻に至って人気作としての地位を揺るぎないものとして、小学館の全面バックアップのもと日曜の午前中に1年にわたってのアニメ化がなされました。漫画家としては最大限の成功を手に入れたといってよいでしょう。
しかし、次の野望として「大きな物語の支配者になる」という気持ちが作品から滲み出るようになると、途端に作品全体が幼稚臭く見ていて苦笑するような表現が激増しました。この作品の元ネタは間違いなく「少女革命ウテナ」と「新世紀エヴァンゲリオン」の二つです。00年代のクリエイターに多く見られる「セカイ系」「衒学的作風」に強く憧れていることが分かります。
しかし、これが下手というかどうしようもないというか、ラブコメのキャラクター造形であれだけの才能を示しながら、ストーリーを展開しようとすると漫画家としての器の小ささばかりが目立って収拾がつかなくなりました。
若木民喜の悪影響
そして250話ぐらいから、さらに悪い要素が作風に影響を及ぼし始めました。当人同士は漫画家として「ソウルメイト」と呼び合うぐらい仲が良いのですが、畑健二郎が若木民喜の才能に嫉妬したのは明々白々で、一番顕著なのは駄キャラ「水連寺ルカ」でしょう。ヒナギクという傑出したキャラが居るのに、神のみぞ知る世界の「中川かのん」的なキャラを創造しようとして大コケしています。この浅い思いつきのルカを物語的に着地させるのに3年以上かけてしまい作品自体を腐敗させてしまいました。
映画の失敗、アニメ三期の惨劇
両方とも畑健二郎先生がシナリオを担当していますが4流の内容で酷いものでした。特にアニメ三期はアニメのオリジナル展開を意気込んで作ったはよいものの、すべてが破綻してもはや話題にすらならない状態に陥ってしまいました。一応アニメは四期も作られましたが、この四期が最初から最後まで作画崩壊しているような糞アニメで、ここに及んでこの作品は「痛い」存在にまで落ちぶれました。
意地になって50巻かけて連載を終わらせる。
36巻以降は読むのが嫌になったので内容もよく記憶していませんが、とにかく意固地になって最後までたどり着いて、やっとのことで昨年連載が終わりました。10巻までは神作品、20巻ぐらいまでは良作だったのですが、この作品ぐらい評価が光速で地に堕ちた作品は類例がないでしょう。
面目を保った「それが声優!」
おそらく人気の低下と作品に対するモチベーションが保てないのは畑健二郎先生も自覚していたようで、そのストレスを解消するために人気漫画家でありながら同人活動に注力するようになりました。そこに登場したのが、結婚に至った浅野真澄さんでした。その文才を生かして声優業界のあるあるネタの物語を創り、畑先生は一番得意なキャラクターづくりに専念したことで、作品は驚くほどの良作に仕上がり、同人誌作品にも関わらずアニメ化するという慶事に恵まれました。そしてアニメも評判がよく、畑先生の名声は大きく回復しました。
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畑健二郎のコアコンピタンス
「それが声優」は四コマフォーマットの作品でした。畑健二郎の成功というのは本質的には「あずまんが大王」に始まる萌え四コマと同様のキャラクター至上主義の訴求力が読者に受けたのだと思います。新連載も普通のフォーマットのようですが、もう一度大ヒットを狙うのであれば、きらら系に掲載されるような4コマフォーマットがよいと今でも思っています。新連載はちゃんと物語を作れる奥様の影響がよい方向に出ることを祈るのみです。