川原泉を知ったのは大学生の時だから大昔だ。未だに思いだしたように読み返しては感動している。川原泉が神懸かっていた時期は短い。1984年~1986年の三年間に生み出された短編の数々は、マンガ史に確実に残るきら星の名作ばかりだ。短編に神髄があるのに、人気にあやかって連載作品を描かせたことで急激に創造力が衰え、あとは坂を転げ落ちるように作品のクオリティが下がっていった。臨界点を超えてからの作品は醜悪といっていいほどで、とても同じ人間が創った作品だとは思えない。
月夜のドレスは84年の作品で傑作中の傑作として多くの人が認める作品だ。個人的にもベストスリーには必ず入る。
象徴的なシーンを切り取ってみたが、このスキャン画像だけではこの作品の素晴らしさはほとんど伝わらないだろう。当時でさえ絵は上手い方では無かった。
無気力系女子高生の秋好さんと、女装趣味の剣道部主将の江藤君というキャラクターを80年代半ばに創作しただけでもスゴイ。限られた頁で濃いキャラクターの戯れを深い感動と共に落とし込める力量は類例がない。大物漫画家のほとんどが長編が評価され名声を得ている。川原泉は僅か三年間の短編の傑作群で歴史に名を残した。宿っていた創作の神様は逃げてしまったが、降臨していたときに生み出されて、紙に定着した作品の輝きは色あせない。
私の拙い文章力ではこの作品の素晴らしさをうまく伝える自信がない。
是非、中古でよいので下記の短編集を一読して欲しい。
- 作者: 川原泉
- 出版社/メーカー: 白泉社
- 発売日: 1994/09/01
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