- 作者: 松本昭夫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2001/09
- メディア: 文庫
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1950年代までは統合失調症の治療法は実質的に皆無であった。患者は、閉鎖病院に隔離され、インシュリン・ショック療法や電気ショック療法と称した酷い治療を受けた。「ショックを与えれば脳が正常に戻るかもしれない・・」その程度の理由しかなかったらしい。
医療でさえそのレベルなので、患者の苦しみは深かった。原因を内観しても(この著者の場合は)思春期の失恋ぐらいしか思い当たる節がない。まだトラウマという概念もなかった。
単に脳内の物質のバランスが悪かっただけなのに、内省に内省を重ねる姿は痛々しい。しかし、その姿はどうしても私自身に重なってしまう。無意味な内省や内観のドツボに嵌まることの空しさと虚しさは、よくわかる。心を病むというのは、ある側面ではそういうことなのかもしれない。