老人が煩雑に口にする処世訓に「感謝」がある。
「ありがたい、ありがたい」とお経のように唱える老婆を見たことは、誰でも一度はあるはずだ。自力で状況を変えられない弱者である老人の保身から出た、汚れた言葉だと思っていた。
しかし、視点を変えるとこれは究極のポジティヴシンキングでもある。我が身の不幸を呪う言葉を吐いたり脳内で反芻するよりは、現状を言祝ぐ方が心が軽くなることは間違いない。深い人生洞察無しに老いた人も感謝を人生観の基幹に置くようになるとすれば、老人になる前にこの境地に先んじて達した方が、賢明なのかもしれない。
なぜ、感謝するとうまくいくのか (2012/04/14) 五日市 剛 |