精神の強さとか弱さというのは当を得ない言い方だ。
それが実は肉体の諸器官の状態の良し悪しに過ぎないからである。
この因果関係がひっくり返りやすいのが理性の大きな欠点だ。不快と不幸を等式で結ぶ愚かさに気づけない。
不快なのは健康状態が悪いからだ。不快と不幸の境目が分からないからといって、ぜんぶ不幸だと考えたらダメだ。不快を不幸にカウントしたら、老いれば老いるほど不幸の絶対値が増えてしまう。
体調がよく、環境もよいという幸運に身を置くとき、不幸の底に沈むことはむずかしい。不幸をつよく感じるとき、体の調子も必ず悪い。体の調子が悪いのに、心の調子が悪いと考えてしまう。
運動不足や栄養の偏りで体が悲鳴を上げているのに、原因を正さないで、過去のトラウマを引っ張り出して、頭の中だけに存在する「誰か」を深く恨んで不幸を膨張させている。不幸を加速させているのは、現在の体調の悪さだという可能性に、まったく思考が及ばない。
不幸を感じたら、とりあえず散歩に行く
単純なようで、最強のライフハックだ。
- 作者: 二宮フサ
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1989/12/18
- メディア: 文庫
- 購入: 11人 クリック: 76回
- この商品を含むブログ (80件) を見る