わかりました あきらめましょう。

私は進歩しない 旅をするのだ

人類の脳は嫌な記憶を記録するために肥大化してきた。

動きが心をつくる──身体心理学への招待 (講談社現代新書)

動きが心をつくる──身体心理学への招待 (講談社現代新書)

良書。「脳と動きの関係」の本質は「脳からの指令による動きではなく」「動きのフィードバックを処理するための脳」であるというのが主旨だ。

パブロフの犬。ベルが鳴るたびに食事を与えると、ベルが鳴るだけで唾液が出るという有名な実験だ。この実験で重要な点がもう一つあるという。ベルを鳴らすだけで食事を与えないことを繰り返すと、唾液が出なくなってしまうという事実だ。

一方、ベルが鳴るたびに電気ショックをあたえる実験では、ベルが鳴ってもショックを与えないシチュエーションを延々続けても、やはりベルに犬は怯えるらしい。

報酬系の条件反射は消えるけれども、回避系の条件反射は消えないらしい。この回避系情報をメモリーするために脳が進化したのではないかという説があり、それは様々な学者の実験や考察により、ほぼ間違いのない仮説となっているとのことだ。

脳と意識の本質とは「嫌な記憶のメモリーを活用して生命を守る」ことなのだ。すべての意識はこの原理から組み立てられているとのことだ。

これと原始仏教の思想は重なっている。釈迦は四苦八苦といって生の本質を苦しみにあるとした。そしてそこから抜けるには、瞑想等をとおして四苦八苦に雁字搦めになった自我から離脱するしかないとの思想だ。

自意識というのは「過去の負の記憶との対話」である。自分が何を普段考えているのかというと、まさに「過去のデータベースを参照しながら、どう動くか、どう考えるかの再定義」これの繰り返しであるようだ。メモリー過剰の老人が新しい行動や考えになじめないのは当たり前なのだ。

未知の行動への跳躍こそが、不幸な人間がそこから抜け出すための処方箋なのでは・・そう考えた。