天空団地_404

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人格障害と心の病の違い

人格障害とは「性格の偏りが社会的に迷惑をかける障害」という意味です。病名ではなく、社会心理学の範疇に属する言葉です。

その性格の偏りによって当人が苦しいかどうかは人格障害の判断基準とはなりません。社会にとって迷惑かどうかで、人格障害のレッテルが貼られます。英語ではPersonality disorderといいます。

人格障害の一つに「境界性人格障害」というのがあります。ボーダーラインともいいます。リストカットをしたり他者への評価が崇拝と罵倒の間を激しく揺れ動くストーカーに多い人格障害です。なぜ「境界性」というのかというと、他人に迷惑をかけるという意味では人格障害者なのですが、自傷行為に診られるように当人も苦しんでいるという点で心の病の側面も併せ持っているので、境界上にあるという意味でこのように名付けられています。

心の病の現在における精神医学上の定義は「脳内物質のバランス不備で当人が苦しんでいる病気」ということです。あくまでも当人がその疾患によって苦しんでいるかどうかが基準となります。しかし、統合失調症(精神分裂病)のように病識のなさが病気の特徴という疾患もあります。

それでは統合失調症は人格障害者に分類されるべきなのかといえば明確に違います。なぜならば、統合失調症は薬物療法で、ほぼ通常生活を問題なく送れるレベルに、回復できるというエビデンスがあるからです。

同様にうつ病・躁鬱病も薬物療法で良くなるというエビデンスがあります。薬物療法が確立していない時代には人格障害と心の病は同じメンヘラーというくくりで、社会の疎外者として遠ざけられていました。近代医学成立以前に心を病んだ人を社会はどう処理していたかといえば、精神病院という名の監獄に隔離していたのです。

その獄中の隔離患者をおとなしくさせるために盛られた薬物のなかに、うつ病や統合失調症を治す力のある薬物が偶然発見され、そこから演繹的に「物質が心に効くのであれば、心の病の原因は脳内の物質にあるのではないか?」という着眼点が生まれ、そこから近代精神医学が始まり、人格障害と心の病は切り離して、治療されるようになりました。

メンヘラーということばで一括りにされますが、人格障害と精神病は概念が違います。もちろん人格障害者は精神病に罹患しやすく、逆もまた然りであることも事実です。

ただ声を大にしていいたいのは、人格障害=心の病(精神病)ではないということです。人格の偏りには薬物療法はほぼ効きません。逆からいえば向精神薬を服用しても人格は変わりません。薬は脳内物質のバランスを正す手助けをしているだけです。うつ病ならセロトニンとノルアドレナリン、統合失調症ならドーパミンです。

心の病を偽装する人格障害者というのが、いま問題になっていますが、それは人格障害と心の病の概念の違いに鈍感な世間一般の無知を利用した詐欺の一種のようなものです。こういった問題が偏見を助長することになってしまい、問題がややこしくなってしまっているのですが、問題の本質は、そこではありません。